2020-07-07 11:07

NMNは骨髄幹細胞を刺激し、より多い骨と少ない脂肪を形作る

206本の骨が成人の骨格を支え、重要な器官を保護し、体重を支え、ヒトを運動させる。骨の硬い表層の内側には、ハニカムのような穴がある。骨組織はすべて分解され、継続的に補充される。ただし、歳を重ねて新しい骨の形成は古い骨の除去に追いつかない。外層が薄くなり、小さな穴が大きくなる——頑丈だった骨は擦り切れてしまう。
中山大学の中国人科学者らはこのほど、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)という分子が、幹細胞群への刺激によって脂肪の代わりに骨細胞に分化させることで、マウスの骨生成を促進できることを発見した。『Nature』誌の2019年号に掲載されたこの方法は、NMNが骨粗鬆症に対する新しい潜在的介入となることを明らかにした。
骨髄の間葉系間質細胞(mesenchymal stromal cells: MSC)は、多能性幹細胞の貯蔵庫であり、骨、軟骨、脂肪などの多種類の細胞に分化できることを研究チームは知っている。この幹細胞は、骨組織内のバランスを維持している。ただし、骨髄のMSCが骨組織ではなく脂肪に異常に分化すると、骨形成に支障をきたし、骨の老化や骨粗鬆症の原因となる。
NMN治療がMSCの増殖を有効に促進した。研究チームは、細胞培養物と成体マウスにおいて、幹細胞の数の増加を発見した。さらに、MSCを2種類の異なる骨形成細胞と脂肪形成細胞に誘導したとき、NMNがこの2種類の細胞に深刻な影響を及ぼしていることも発見した。

間葉系間質細胞(MSC)をNMNで治療する前(左)及び治療後(右)。治療後、細胞数が「拡大」した。(Song J, Li J, Yang F, et al., 2019)
 
NMNで治療された骨形成細胞株は骨芽細胞(新しい骨を形成する細胞である)を約50%生成したのに比べ、未治療の細胞では約30%しか生成されなかった。一方、NMNで治療された脂肪形成細胞株は、未治療細胞より脂肪を形成する脂肪細胞の濃度が低かった。この研究結果は、NMNが脂肪形成を妨げながら骨の生成を促進することを示唆している。
研究者らは、1歳の高齢マウスも対象とし同様の結果を出した。NMN溶解水を飲んだ高齢マウスでは、一般の高齢マウスに比べて脂肪形成細胞の数が減少する一方で、骨密度の増加が見られた。しかし、「NMNは成体マウスの骨と脂肪のバランスを変化させない」と研究者らは述べた。
ヒトでも、高齢者は骨粗鬆症になりやすい。アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)によると、65歳以上の女性の4人に1人が骨粗鬆症を患い、男性の20人に1人が骨粗鬆症を患っているという。骨粗鬆症は「沈黙の病」とも呼ばれ、骨が物理的に弱くなるのを感じることができず、多くの人は骨が折れてはじめて気がつくようだ。
加齢を伴う骨量減少に対するNMN治療の潜在力を検証するために、研究チームは成体マウスに骨量減少とMSC損傷を引き起こす放射線を照射し、骨粗鬆症効果をシミュレーションした。照射によってMSCの拡張能力が75%低下し、骨芽細胞の減少と脂肪細胞の増加が見られた。しかし、NMNが照射の影響を逆転させた。NMN投与されたマウスは正常マウスと同様にMSCを拡張させることができ、骨密度を増加させ、照射後の脂肪形成を約66%抑制することができた。


大腿骨骨幹部からの海綿骨を示す代表的なμCT画像。(Song J, Li J, Yang F, et al., 2019)
 

照射後にNMNで治療されたマウス(右)は、未治療マウスより脂肪形成組織(赤色で色付ける)が顕著に少なくなる。(Song J, Li J, Yang F, et al., 2019)

著者らは、「NMNは高齢マウスと放射線照射されたマウスにおける骨と脂肪のバランスを増化させることが示され、それが老化中の骨量減少を救う有用な治療法であることを示唆している」と指摘している。「MSCの調節障害によって特徴づけられるが、私たちの研究結果は、NMN治療と骨粗鬆症及び老化になったマウス治療との潜在的な関連を明らかにした。」
 
 
出典
参照論文:
Song J, Li J, Yang F, et al. Nicotinamide mononucleotide promotes osteogenesis and reduces adipogenesis by regulating mesenchymal stromal cells via the SIRT1 pathway in aged bone marrow. Cell Death Dis. 2019;10(5):336. Published 2019 Apr 18. doi:10.1038/s41419-019-1569-2.