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NMNは老化した細胞を減らして加齢による視力の衰えを改善する
NMNは老化細胞を減少させることにより網膜の損傷を減少させることが、加齢型黄斑変性モデルで分かりました。
ハイライト:
- 黄斑変性のヒト細胞モデルにおいて、NMNは老化した細胞を取り除き、DNA損傷を50%軽減しました。
- 黄斑変性のマウスモデルにおいて、NMNは老化を抑えながら、網膜構造を回復させました。
私たちが周りのものを詳細に見る能力は黄斑と呼ばれる小さなパッチ状のニューロンに依存しています。加齢に伴い網膜のこの部分が退化し、視力がぼやけ、黄斑変性という病気をひきおこしているのです。さて、中国の同済大学の研究者は、老化した細胞が黄斑変性を引き起こす可能性があることを発見しました。
『Oxidative Medicine and Cellular Longevity』に発表された研究によれば、Ren氏と彼の同僚は黄斑変性モデルを作るために、ヒトの網膜細胞をヨウ素酸ナトリウムという化学物質に入ました。実験的に誘導され老化した網膜細胞が、DNA損傷、有害分子活性酸素(ROS)と呼ばれる有害な分子レベル及びDNAの損傷レベルを増加させたことを発見しました。そして、これらのすべての問題はニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)による治療で回復することも発見したのです。さらに、マウスモデル実験においても類似したの実験結果が見られ、NMNの治療後に網膜構造が改善されました。
NMNはヒトの網膜細胞を修復する
網膜は眼球の後側の壁にコーティングされた細胞の膜であり、視力にとって極めて重要な細胞膜です。ヨウ素酸ナトリウム(NaIO 3)は、それがNaIO 3に晒されると網膜の老化を引き起こすため、加齢による黄斑変性の研究に広く用いられています。Ren氏と彼の同僚は、ヒトの網膜細胞が、老化細胞の増加、DNAの損傷、ROSレベルの高さなどを含む加齢に伴う網膜変性において、共通の特徴を示すと発表しました。老化した網膜細胞をNMNで治療すると、老化細胞の割合は低下し、DNA損傷が50%減少し、ROSレベルは抑制されたのです。
(Ren et al.,2022|Oxid.Med.Cell.Longev.)NMNは人体網膜細胞の老化を改善する。健康な網膜細胞(対照)に比べて、退化した網膜細胞(NaIO 3 1 mM)は、老化細胞(β-gal)、DNA損傷(γ-H 2 AX)と活性酸素(細胞質ROS)レベルを増やしたが、これらはいずれもNMN(NMN+NaIO 3 1 mM)を用いることによって抑えられた。
加齢のサインの1つは「老化」として知られている現象で、正常な細胞がDNAの損傷や過剰なROSなどの細胞ストレスによって年老いてゆく状態のことを言います。老化細胞が蓄積すぎると炎症作用を刺激し、黄斑変性を含む様々な年齢関連疾患の始まりとなるのです。
NMNの網膜の劣化へ与える影響をより生理学的にわかるような画像にするために、Ren氏と彼の仲間たちはマウスにNaIO 3を投与し、網膜の状態を観察する実験をしました。
そしてNaIO 3が、マウス網膜の構造変化を誘導して、老化を進行させることを発見しました。ところが、NaIO 3に晒されていたマウスにNMNを投与し治療した結果、網膜の構造変化は沈静化し、老化した細胞の増殖も防ぐことができたのです。
(Ren et al.,2022|Oxid.Med.Cell.Longev.)NMNはマウスの退行した網膜構造の変化を防ぐことができる。網膜中のタンパク質(緑色、ZO−1)は、NaIO 3(10 mg/kg)を介して誘導された網膜の健康な網膜(対照)に対する構造変化を表したが、これらはまたNMN(NMN+10 mg/kg)により修復された。NMNはまたNAD+レベルを回復することができる。
Ren氏と彼の仲間たちの研究結果によると、NMNはニコチンアミドアデニン二ヌクレオチド(NAD+)のレベルを上げ、網膜変性の様々な症状を回復させることができることを示唆しました。NAD+はエネルギー代謝に関与する重要な分子であり、DNAを修復し、ROSを減少させることを可能にする燃料酵素として知られています。網膜を含む様々な組織におけるNAD+レベルは年齢とともに低下します。しかし、上海に拠点を置く研究者たちは、彼らの黄斑変性マウスモデル実験で、NMN投与がNAD+レベルが回復することを明らかにしました。
NMNは老化による失明を防ぐことができるか?
アメリカの国立眼科研究所の発表によると、黄斑変性は部分的な失明を引き起こす可能性があるというのです。しかし、サプリメントの服用によって網膜の退化を遅らせ、視力低下を未然に防ぐことができるとも言っています。これらのサプリメントには、亜鉛、ビタミンE、ビタミンCなどのビタミンやミネラルが含まれています。さて、この有効ビタミン・ミネラルのリストにNMNを追加することは可能でしょうか。
動物モデル実験では、NMNがこれまで黄斑変性を軽減し、網膜の剥離を防ぐということが示されてきました。また更に、変性した齧歯類の網膜では、NAD+合成に重要な一つの酵素が枯渇していたが、ぶどうの種子抽出物はマウスのもう一つのNAD+関連酵素を活性化させ、網膜の老化を回復させることが示されました。 これは意味することは、NAD+を作るのに必要な酵素が網膜の老化に伴い失われてしまったように見えるということです。 結局のところ、ヒトでの臨床研究が必要ですが、これまでの複数の動物を使った研究において、NMNが黄斑変性の進行を遅らせ、おそらく部分的失明も未然に防ぐ、現在最も有力な候補であることを示唆しています。
Story Source
Ren C, Hu C, Wu Y, Li T, Zou A, Yu D, Shen T, Cai W, Yu J. Nicotinamide Mononucleotide Ameliorates Cellular Senescence and Inflammation Caused by Sodium Iodate in RPE. Oxid Med Cell Longev. 2022 Jul 18;2022:5961123. doi: 10.1155/2022/5961123. PMID: 35898618; PMCID: PMC9313989.