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臨床研究によるとNMNは人体の血液中のNAD+を効果的に増加させることが示されています
富山大学が最近発表した研究によると、1日250ミリグラムのニコチンモノヌクレオチド(NMN)の摂取は、人体の血中NAD+を著しく向上させることを明らかにしました。
ハイライト
- 健康な被験者が12週間にわたり1日あたり125ミリグラムのNMNを2回摂取した場合、全血中のニコチンアデニン二ヌクレオチド(NAD+)のレベルがほぼ二倍になりました。
- NMNを補給した後の被験者に、体重変化や血圧上昇などの副作用は観察されませんでした。
- NMNを服用した4週後、被験者の全血NAD+レベルは安定化し、12週間の研究期間中それを持続しました。
世界人口の高齢化、高齢者人口割合の増大につれ、高齢化における健康寿命が話題となっています。60歳以上の人口が今の2倍になると予想されている2050年は、「シルバー津波」と呼ばれています。過去10年の間に発表された様々な研究では、NAD+前駆体(NMNおよびNRを含む)によって、細胞エネルギーの生成が増強され、老化に関連する器官および組織機能の衰退を防ぐ可能性が明らかにされつつあります。
さらに、科学者たちは、これらの前駆体が血液中の必須分子NAD+の濃度を効果的に増加させることができるかどうかを確認しようと研究を続けています。
最近、中川氏と同僚は『 Frontiers in Nutrition』に、22~64歳の健康な人において、毎日250ミリグラムのNMNを経口投与したところ血液中のNAD+レベルが明らかに増加したことを発表しました。NMNを服用してから約4週間で、血液中のNAD+レベルはほぼ倍になり、研究中12週間その結果を持続しました。NMN 4週間の服用中に血中脂肪、白血球数および肝機能指標の数値測定では悪化したものはなく、体重、血圧共に何の悪影響も認められませんでした。さらに重要なことに、心拍数の上昇は全血NAD+レベルの増加と密接に関連しており、これは心拍数の上昇がNAD+の代謝を促進し、それによってNAD+レベルを向上させることを示しています。
中川氏と仲間達は「健康な人にとって、毎日250ミリグラムのNMNを12週間持続して服用することは安全で良い健康習慣になりうることが認められ、その結果は、NMNの経口投与が安全であり、また人体NAD+レベルを高める実用的な療法になる可能性があることを示している」と表明しました。
NMNを取ることは血液中のNAD+レベルを2倍にすることができる
中川氏とその仲間達は、NMN服用中の12週間にわたり全血中測定によってNAD+とNMNレベルを観察しました。研究者は、NMNを服用してから4週間後、血液中のNAD+レベルはほぼ2倍の20µMから45µMまで増加したことを確認しました。血液中のNAD+レベルは12週間安定的に維持され、NMNを停止した後4週間で効果は消えました。また、NMNを服用していなかった被験者と比較して、血液中のNMN自体のレベルに差は見られませんでした。これは細胞が血液中のNMNをほぼ完全に代謝していることを示しているのだと推察できます。これらの発見は、1日250ミリグラムのNMN投与はすぐに代謝さら血液中のNAD+レベルをほぼ2倍にしましたが、投与を終了した4週間後にはその効果がなくなり、非常に代謝されやすいことを示しています。
(Okabe et al.,2022| Frontiers in Nutriton)NMNを12週間補給すると、血液NAD+レベルが2倍近く増加し、全血NMNレベルを増加させない。毎日250ミリグラムのNMNを4週間経口投与した後、NMNの全血レベルはほぼ2倍に増加した。また残りの研究期間中は安定したままであった(左図)。血液NMNレベルは、12週間の研究期間でまたNMNの投与が停止された4週間後(第16週)にわたって安定に維持されていた。これらの結果は、人体にNMNを補うことで血液NAD+レベルがほぼ2倍になるだけでなく、NMNレベルが増加しないことを示している。さらに、血液中のNMNが大量に代謝される可能性があることを示している。
NMNは人体への副作用なし
NAD+は、細胞内の生化学反応の何千もの重要な役割を果たし、ATP分子の生成をサポートすることによってエネルギーレベルを維持します。ATPは人の細胞にとってエネルギー通貨のようなものです。マウス実験では、全身のNAD+を増加させることで、心血管疾患、アルツハイマー病、肝臓疾患のような年齢に伴う臓器や組織の変性を防ぐことができました。 (ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)と呼ばれるタンパク質は、NAD+を使って損傷したDNAを修復し適切な生理機能を促進します。Sirtuinsという他のタンパク質はNAD+を使って、遺伝子機能、代謝と体のストレス反応を調節しています。NAD+に関するこれらのすべての発見は、これらの分子の細胞の豊かさを増やすことが人間により健康的に歳を重ねることの鍵をにぎる可能性を示しています。しかし、ヒトの体内でNAD+を活性化させることについては、安全性が大変重要な要因となります。
毎日250ミリグラムのNMNの服用で副作用が生じるかどうかをテストするために、日本の研究チームはいくつかの重要な生理パラメータを検査しました。中川氏と仲間の研究者たちは、12週連続でNMNを服用しても体重の増減は見られず、体重に関する影響はないことを確認しました。研究チームはまた、体重指数、これは体の脂肪と身長の比率を測定し求める指数で、この値にも特に重要な変化をもたらさないことも確認しました。
さらに、NMNをとっている間、血圧測定値も安定していました。これらのデータは、1日250ミリグラムのNMNを12週間連続で服用して副作用はないということを示しています。
(Okabe et al.,2022| Frontiers in Nutriton)12週間にわたって1日あたり250ミリグラムのNMNを経口投与し、体重および血圧の生理的測定値に明らかな変化は見られなかった。左から、グラフはNMNの経口投与は、体重(BW)、体重指数(BMI)、心臓ポンプ圧(収縮期血圧)、心臓充血圧力(拡張期血圧)の変化をもたらさないと示している。これらの結果は、NMNの補充が明らかな生理的副作用を生じないことを示している。
中川氏と仲間の研究者たちは、脈拍数と総血中NAD+レベルの上昇との関係性について何か見つけられないか模索しました。そして血中NAD+レベルと脈拍数の間に強い相関(R=0.768)があるということを突き止めました。例えば、脈拍が1分間に100回の被験者の血中NAD+レベルは、脈拍が1分間に60回の被験者の2倍であったということを対象として、高い心拍数はNMNのNAD+への代謝を促進するという観点を実証したのです。
(Okabe et al.,2022| Frontiers in Nutriton)4週間にわたって1日250ミリグラムのNMNをとった場合、高パルス率は血液中のNAD+高レベルに関連がある。NMNを4週間以上服用した後、毎分100拍と同じくらいのパルス率はほぼ毎分約60ビートのパルスレートと比較して血液NAD +レベルのほぼ二倍と相関した。研究はまだこの発見の正確な理由やメカニズムを知らないが、これは摂取したNMNが消費された後、運動パルス率が増加するにつれて、血液のNAD+レベルをさらに増加させる可能性がある。
NMNの効果に関する結論は、まだ多くの課題と研究が必須
さらなる研究を計測してゆくために、この研究にはまだいくつかの制限があります。現在の研究では、NMN服用被験者は15名のみでしたが、今後はさらに多くの被験者が必要で、それにより初めて多くの発見がなされるものと期待されます。中川氏と同僚研究者は、NMNが血中のNAD+レベルを増加させることを示すことはできたものの、特定の器官や組織のNAD+レベルが増加はまだ発見できていません。他のヒトでの臨床研究では、NMNまたはNRの補充が骨格筋中のNAD+レベルを増加させることには成功していません。したがって、これからの研究では、NMNの服用が血液以外の他の臓器組織中でもNAD+を増加させるかどうかの研究が急がれます。本研究においてもNAD+レベルの上昇が身体に及ぼす長期的な影響は研究されておりません。いかなる潜在的、長期的な副作用を確認するためにも、研究者はNMNを複数年にわたり服用した健康な被験者およびそうではない被験者においてヒト体内での代謝状況を観察していかなければなりません。
本研究でのより高い脈拍数とNAD+レベルのとの相関性があるという発見は、大変興味深いものでした。これが本当であれば、たとえば運動などの心拍数の上昇をもたらす活動が、血液中のNAD+レベルの上昇を促進すると言い換えることもできるわけです。
参考文献
Okabe K, Yaku K, Uchida Y, Fukamizu Y, Sato T, Sakurai T, Tobe K, Nakagawa T. Oral Administration of Nicotinamide Mononucleotide Is Safe and Efficiently Increases Blood Nicotinamide Adenine Dinucleotide Levels in Healthy Subjects. Front Nutr. 2022 Apr 11;9:868640. doi: 10.3389/fnut.2022.868640. PMID: 35479740; PMCID: PMC9036060.